免疫力を高め、がんを防ぐ

免疫が毎日発生するがん細胞を攻撃し、がんの発病を防ぐ

がんは、ある細胞の遺伝子が、何かのきっかけで突然変異を起こしたもので、その突然変異が数回重なってがんを発病させます。

ただし、がん細胞ができたとしても、がん組織へと進行しなければ、がんは発病しません。
突然変異の起きた細胞がすべて、大きながん組織に成長するわけではありません。

その理由の一つは、免疫監視機構が働くからです。
体内にがん細胞が発生しても、多くのさまざまな免疫細胞が連動して働き、がん細胞を撃退します。

がん細胞が発生すると、まず先に気づき動くのが、マクロファージです。
この情報をいわば司令官役にあたるヘルパーT細胞(リンパ球T細胞の一つ)に伝えます。
情報を受け取ったヘルパーT細胞は、やはりリンパ球T細胞の一つで、攻撃部隊であるキラーT細胞に、がん細胞への攻撃命令をだし、これを受けてキラーT細胞などが、がんへの攻撃を開始します。

これ以外に、リンパ球の10~20%を占めるNK(ナチュラルキラー)細胞も、がん細胞を見つけ出しては時間的余裕を与えずに単独で攻撃を行います。

免疫監視機構が働く前にも、突然変異によって傷ついた遺伝子を修復する遺伝子が働きます。
この遺伝子群は、がん細胞を元に戻したり、自殺に追いやったりして発がんを防ぎます。

人の体には、1日に3000~5000個のがん細胞が発生するといわれていますが、がんを発症しないのは、こうした免疫監視機構による攻撃や修復遺伝子の働きによって、増殖しないまま撃退される、がん細胞が多数あるからです。



免疫力を高めておくことががん予防には大切

がんを発生させないのは、免疫が正常に機能している状態で、免疫力が低下しているとそうはうまくいきません。
修復遺伝子も免疫監視機構もお手上げ状態になり、がん細胞の増殖に歯止めをかけることができません。

すなわち、がんなど重大な病気の予防には、免疫力を高めておくことが大切で、その効果は大きいです。

ただし、この免疫監視機構は、年齢と共に低下してきます。
例えば、リンパ球T細胞の予備軍は、生まれたときは胸腺に1gあたり10億個ありますが、40代には1000万個に激減しています。
これは、年をとると胸腺が小さくなり、その機能が落ちるからです。
修復遺伝子にしても、傷ついた遺伝子が増えれば、すべてを修復することができなくなります。

がん細胞は、だれもが持っています。
老衰で天寿を全うした人たちを解剖して詳しく調べてみると、甲状腺、前立腺、子宮などに必ずといっていいほど微小がんが見つかります。

ただ、正常な細胞が、がん化して早期がんとして発見される大きさになるまでには約9年かかります。
したがって、その間に免疫力を高めておけば、がん細胞は増殖せず、また逆に消滅させる可能性も十分にあるのです。

自分の体に備わっている免疫力を高めてやることは、がん予防、再発防止にとても重要なことなのです。