腸内細菌と免疫系のかかわり

免疫力を高めるには、腸の活性化が非常に重要です。
近年の研究で、腸内細菌が免疫系と密接なかかわりを持つことがわかってきました。

外的から自分の体を守る免疫系(免疫システム)は、ウイルスやガンに冒された細胞を撃退し増殖を防ぐ細胞性免疫と、タンパク質など小さな分子の侵入を防ぐ液性免疫に大別されます。

ヘルパーT細胞には、細胞性免疫の主役であるTh1細胞と液性免疫の主役であるTh2細胞とがあります。
この2つは、いわばシーソーの関係にあって、どちらかが優位だとどちらかが抑えられる仕組みになっているため、シーソーのバランスがくずれると体にさまざまな不調が起きてしまいます。

例えば、Th1細胞の働きが落ちてTh2細胞の働きが上がると、免疫はタンパク質に過剰反応してアレルギー疾患になりやすく、ウイルスやガン細胞をうまく処理できなくて感染症やガンにかかりやすくなります。
つまり、免疫力はTh1細胞とTh2細胞の活性バランスが重要なのです。


悪玉腸内細菌の増加が免疫バランスを崩す

現代人は、Th2細胞の活性が高く、Hh1細胞が抑えられている傾向にあるので、ガンやウイルス性疾患、アレルギー疾患が増える一方です。
Th2細胞が優位になっている理由としては、タンパク質の過剰摂取や、食品の加工で変性した粗悪なタンパク質の摂取があげられます。

食物は小腸で消化・吸収されますが、過剰なタンパク質は消化されないまま異種タンパク質として大腸に送られ、悪玉の腸内細菌のエサになります。

例えば、悪玉菌は小腸が分解できなかった焦げた魚のタンパク質も分解して自分の栄養源します。
悪玉菌が異種タンパク質を分解すると、毒性を持ったガスが生成され、大腸粘膜を傷つけます。
すると異種タンパク質がそこから粘膜に侵入しようとするので、それを防ぐために大腸の周りのTh2細胞が活性化されます。
こういった状態が続くので、現代人のTh1細胞の活性は常に抑えられた状態で、体によくありません。

免疫系の7割が大腸粘膜に集中しています。
人にとって粘膜は外界の異物が侵入しやすい弱点なのです。
ガンができる場所の多くは粘膜です。
弱い粘膜だからこそ、免疫は、常に守りを固めているのです。

大腸内でTh2細胞の活性が高まると全身の液性免疫が過敏になり、花粉症などのアレルギー疾患が増えます。
さらに腸内の悪玉菌がタンパク質を分解してできる有毒なガスが便秘のため排出されないと、ガスは大腸の毛細血管を通じて血液中に溶け込み、皮膚炎や肺の病気などの原因となります。

また悪玉菌は、強力な発がん性物質を作ることもわかっています。
近年増えているクローン病や潰瘍性大腸炎などの腸疾患も悪玉菌が関係しているといわれています。
悪玉菌が増えるとTh2細胞が異常に活性化し、免疫系のシーソーバランスが崩れてTH1細胞の活性が落ちるのです。

つまり、免疫力を適正に整えるには悪玉菌を減らし、善玉菌を増やすことが重要です。
善玉菌には、Th1細胞の活性を高め、全身の免疫バランスを整える働きがあります。